貿易とは
貿易取引を始めようとする方に、国内取引との違い、貿易の流れなど、貿易に関する基礎的な事柄を紹介します。これから貿易投資相談を受けようとされる方も、質問のポイントを整理するため事前に目を通しておかれることをおすすめします。
国内取引との違い
- 国が違う
- 取引通貨が違う
- 取引相手が見えづらい
- 輸送距離が長い
- 商品受取と代金支払いに時間差がある
01 国が違う
意思疎通面でのリスク
外国人との取引交渉においては、まず言語が異なるため、どちらかの国の言語や英語など第三国の言語を使用することになりますが、意思疎通がスムーズに進まず、誤解が生じるリスクがあります。また、言葉は通じても、各国の貿易管理制度や通関手続きなどの制度が異なったり、取引上の考え方や慣習が異なることにより、誤解や認識違いが生じるリスクがあります。このようなリスクを回避するためには、取引相手との交渉のやりとりをFAX、電子メールや手紙など文書でお互いに注意深く確認し合いながら進めることに加え、最終的には交渉の結果を全て盛り込んだ契約書を作成することが重要です。
法制度の違い
輸出の場合は、日本の輸出規制と相手国の輸入及びその他の取引規制。輸入の場合は相手国の輸出規制と日本の輸入規制を確認する必要があります。国によってはライセンスが必要であったり、商品の規格に適合していないと通関できないことがあります。また、輸入においては販売時の規制も確認しておかないと、輸入した商品をそもそも流通させられない場合があります。
カントリーリスク
外国(特に開発途上国)との取引においては、戦争、内乱、政治体制の変更などにより、輸出入や為替送金の停止などの事態に陥るリスクがあります。このようなリスクを回避するためには、事前に市場調査を行い、国際情勢や当該国の政治経済情勢・社会動向などを把握しておくとともに、リスクが高い国との取引においては、貿易保険[1] でカバーすることが必要となります。
[1] 貿易取引や海外投資において生ずる取引上の危険をカバーする保険。日本では、独立行政法人日本貿易保険が取り扱っている(一部保険は民間でも取り扱いが始まっている)
02 取引通貨が違う
為替変動のリスク
自国通貨と異なる通貨で取引する場合、自国通貨へ交換する際の外国為替相場は日々変動するため、為替の変動リスクが発生します。特に相場の変動が激しい場合は、売買の利益がなくなる可能性もあるため、予めリスクの回避策を講じておく必要があります。方法としては、取引通貨を自国通貨とすることが確実ですが、それが難しい場合は、為替予約[1]などいくつかの方法があります。
03 取引相手が見えづらい
企業の信用リスク
貿易取引では、国内取引に比べ、取引相手と頻繁にFace to Faceで商談することができないため、相手企業の信用度(財務状況、生産・営業能力、経験、誠実性等)を把握しづらく、確実に契約を履行できるかどうか信用上の不安(リスク)があります。このようなリスクに対応するために、事前に信用調査機関を利用するなどの方法で信用調査を実施することが重要です。
04 輸送距離が長い
貨物の損害リスク
貿易取引は、一般的に国内取引に比べ運送距離が長いため、運送に時間がかかるとともに、運送上の事故による貨物の変質や損傷などの損害が発生するリスクも高くなります。このリスクを回避するために、貨物海上保険[1]を付保して損害をカバーすることが必要となります。
[1] 貨物の海上輸送中の危険を担保する保険。
05 商品受取と代金支払いに時間差ある
代金の回収リスクと商品の入手リスク
貿易取引は、国内取引と違って、商品の授受と代金の支払いを同時に行うことは困難であり、時間差が生じます。従って、後払いの場合は、輸出者が代金回収前に商品を出荷することになるため、代金を回収できないリスクを負うことになり、前払いの場合は、輸入者が商品入手前に代金を支払うため、商品を入手できないリスクを負うことになります。このような双方のリスクは、信用状を利用して銀行が代金の支払いを保証することで回避することが可能となります。
資金負担のリスク
代金の回収リスクと商品の入手リスクがカバーされたとしても、例えば後払いであれば、輸出者は、商品の出荷から代金回収までの期間代金を一時的に立て替える形となり、また、前払いであれば、輸入者は代金支払いから商品の入手・販売までの期間、立て替える形となるため、その間の資金負担のリスクがあります。資金繰りや効率的な資金運用の観点からも、双方ともにこの立て替え期間を短くすることが重要ですが、信用状を利用した取引により、この期間を短くし、資金負担を軽減することが可能となります。